犬猫のシニアケア|「年のせい」と病気の見分け方・健診の目安・暮らしの工夫を獣医師が解説
「最近よく寝ている」「散歩を嫌がるようになった」「食は細くなったかな」——年齢を重ねた子の変化は、たいてい「年のせい」で説明がついてしまいます。そして実際、半分くらいは本当に加齢によるものです。
問題は、残りの半分です。治療で楽にできる病気が、老化のふりをして進んでいることがあります。関節の痛み、甲状腺の異常、腎臓病、心臓病。どれも初期の症状は「元気がない」「痩せてきた」という、加齢とまったく同じ見え方をします。
この記事では、シニア期の年齢の目安、「年のせい」と「病気」をどう見分けるか、そして暮らしの工夫までをまとめました。該当しそうな病気には、それぞれ詳しい記事へのリンクを置いてあります。
シニア期は何歳から
犬は体の大きさで変わります
- 小型犬(〜10kg):7〜8歳ごろ
- 中型犬(10〜20kg):7歳前後
- 大型犬(20kg以上):5〜6歳ごろ
大型犬は体への負担が大きいぶん、小型犬より早くシニア期に入ります。「まだ6歳だから」と思っていても、大型犬ではすでにシニア健診の対象です。

猫は7歳から
7歳からシニア期、11歳以上はハイシニアとされています。猫は見た目が若いまま年をとるので、体感よりずっと早く内臓の変化が始まっています。

「年のせい」と「病気」の見分け方
決定的な手がかりは変化のスピードです。
- 加齢:年単位でゆっくり。気づいたら変わっていた、という進み方
- 病気:数週間から数か月で目に見えて変わる。「去年はできていたのに」
もうひとつの手がかりが「増えている」変化です。加齢では、たいていのものは減っていきます(活動量、食欲、筋肉)。ですから増えているものがあれば、それは加齢では説明できません。
- 水を飲む量が増えた
- 尿の量・回数が増えた
- 食欲が増えた(なのに痩せる)
- 夜鳴きが増えた
- 体重が増えた
これらはすべて、何かの病気のサインとして知られているものです。
症状から疑う病気の一覧
気になっている変化から探してみてください。それぞれ詳しい記事を用意しています。
水をよく飲む・尿が増えた
シニア期でもっとも重要なサインです。「たくさん飲むのは良いこと」ではありません。以前より明らかに増えたなら、体が水分を失っているのを補っている状態です。
→ 猫の慢性腎臓病(CKD)|猫でもっとも多い
→ 犬の慢性腎臓病(CKD)
→ 猫の糖尿病|食べるのに痩せるなら
→ 猫の甲状腺機能亢進症
食べているのに痩せてきた
「食欲がある=元気」とは限りません。むしろ食欲があるのに体重が減るのは、体の中でエネルギーが過剰に消費されている状態です。外からは元気そうに見えるため、いちばん見逃されやすいパターンです。
→ 猫の甲状腺機能亢進症|10歳以上の猫では最初に疑います
→ 猫の糖尿病
→ 猫の慢性腎臓病(CKD)
→ 猫の膵炎|食欲が落ちる場合
食欲が落ちて痩せる場合は、腫瘍や歯の痛みも考えます。口の中が痛くて食べられないというケースは実際に多く、処置をすると食欲が戻ります。
→ 犬猫のデンタルケア完全ガイド
→ 犬の乳腺腫瘍|避妊していないメス犬では特に
動かなくなった・散歩を嫌がる
「年だから」で片づけられやすい最たるものですが、多くは痛みが原因です。そして痛みは治療で減らせます。
→ 猫の関節炎・変形性脊椎症|登らない・毛づくろいが減る
→ 犬の椎間板ヘルニア|背中を痛がる、抱っこを嫌がる
→ 犬の甲状腺機能低下症|太る・寒がる・毛が薄くなるを伴うなら
→ 犬の僧帽弁閉鎖不全症|疲れやすい、咳が出る
咳が出る・呼吸が気になる
→ 犬猫の咳・呼吸が苦しいとき|音と呼吸数で見分ける
→ 犬の僧帽弁閉鎖不全症|夜間や興奮時の乾いた咳
トイレの変化
→ 猫の下部尿路疾患(FLUTD)|尿が出ないのは緊急です
→ 猫の特発性膀胱炎
→ 犬猫の嘔吐・下痢|受診の目安
なおトイレの失敗は、認知機能の低下とは限りません。関節が痛くてトイレのふちをまたげない、膀胱炎で間に合わない、ということがあります。叱る前に、体のほうを確認してください。
ふらつく・首が傾く
→ 犬の前庭疾患|高齢犬に多く、多くは回復します
認知機能の低下(犬猫の認知症)
シニア期には、脳の働きが落ちてくることもあります。
- 夜中にうろうろ歩く、夜鳴きをする
- 呼びかけへの反応が遅くなった
- 同じ場所を行ったり来たりする
- 部屋の隅や家具の隙間で止まってしまう
- トイレの失敗が増えた
- 昼夜が逆転してきた
ただし、認知症と判断する前に確かめてほしいことがあります。シニア猫の夜鳴きは、甲状腺機能亢進症や高血圧が原因のことが非常に多いからです。こちらは治療でぴたりと止まることがあります。
また犬でも、目が見えにくくなって不安で鳴いている、関節が痛くて眠れない、という場合があります。「認知症だから仕方ない」と結論づける前に、一度検査を受けてください。
→ 猫の甲状腺機能亢進症|夜鳴きで最初に疑う病気
シニア健診 — 半年に1回をおすすめします
成犬・成猫は年1回で十分ですが、シニア期は半年に1回が目安です。病気の進行が早くなるぶん、1年空けると見つかったときには進んでいることがあります。
シニア健診で見るもの
- 身体検査:体重、体温、心音(心雑音)、呼吸音、しこりの触診、口の中
- 血液検査:腎臓、肝臓、血糖、貧血、炎症。猫では甲状腺ホルモン(T4)を加えます
- 尿検査:血液検査より先に腎臓の変化が出ることがあります
- レントゲン・超音波:心臓の大きさ、お腹の臓器、関節
- 血圧測定:高血圧は失明や腎臓の悪化につながります
とくに猫で10歳を過ぎたら、甲状腺ホルモンの検査は入れておく価値が高いです。比較的簡単に測れて、見つかれば治療でよくなる病気だからです。
費用について:検査の組み合わせによって変わります。「まず基本的なところから」「気になる臓器を重点的に」など、ご希望に応じて調整できます。お電話でお気軽にお問い合わせください(TEL: 055-269-5539)。
→ 犬・猫の健康チェック完全ガイド|毎日の観察と触診の仕方
暮らしの工夫
滑らない床にする
今日からできて、もっとも効果が大きい対策です。フローリングで滑ると関節に負担がかかるだけでなく、転ぶ経験が自信を失わせます。歩かなくなる原因が床にあることは珍しくありません。マットやタイルカーペットを、よく通る動線にだけでも敷いてください。
段差を減らす
ソファやベッドにはステップやスロープを。猫のキャットタワーも、途中に踏み台を置いて一段を低くすると、また登れるようになることがあります。「登れない」のではなく「登りにくい」だけかもしれません。
食器とトイレの高さ
かがむ姿勢がつらい子には、食器を少し高い位置に。トイレはふちの低いものに変えると、失敗が減ることがあります。
寒暖差に気をつける
体温調節が苦手になるため、室温は穏やかに保ってください。冬は暖かい寝床と風の当たらない場所、夏は涼しい休憩場所を。冷えると関節のこわばりが強くなります。
食事
代謝が落ちるのでカロリーは控えめに。ただしたんぱく質は必要量をしっかり確保してください。「シニアだからたんぱく質を減らす」は、腎臓病と診断されていない限り当てはまりません。筋肉が落ちると、かえって動けなくなります。
食欲にムラが出たら、温めて香りを立たせる、ウェットを混ぜる、1日の回数を増やす(少量多回)といった工夫が効きます。
→ 犬猫の食事ガイド|フードの選び方・適量の見極め方
運動は「量より頻度」
長時間の散歩は必要ありません。短くても毎日が大切です。犬なら15〜20分をゆっくり1〜2回、猫なら5〜10分の軽い遊びで十分。まったく動かさないと筋肉が落ち、関節を支える力が弱まって悪循環になります。
生活リズムを変えない
目や耳が衰えてくると、不安を感じやすくなります。家具やベッドの位置を変えない、生活の時間帯を一定に保つ、名前を優しく呼ぶ。こうしたことが安心につながります。夜に落ち着かない子には、小さな常夜灯が効くことがあります。
月に1回、体重を量ってください
シニア期の管理で、もっとも費用対効果の高い習慣です。
体重の減少は、腎臓病・甲状腺の病気・糖尿病・腫瘍のいずれでも起こります。しかも見た目では気づけません。毎日見ているぶん、少しずつの変化は分からないのです。「痩せたかも」と気づいたときには、すでに1割以上落ちていることがよくあります。
小型犬や猫なら、抱いて人用の体重計に乗り、自分の体重を引けば十分です。カレンダーにメモしておくだけで、診察時の判断材料になります。
よくあるご質問
Q. 高齢だから、もう検査や治療はかわいそうでは?
気持ちはよく分かります。ただ、シニア期に見つかる病気の多くは「治す」のではなく「楽にする」ための治療です。関節の痛みを取れば、また散歩を喜ぶようになります。甲状腺の薬で夜鳴きが止まれば、本人も飼い主さんも眠れます。残された時間の質を上げるという考え方をしていただければと思います。
Q. 症状がないのに検査する意味はありますか?
あります。シニア期に多い病気は、症状が出たときにはかなり進んでいるものばかりです。腎臓病は機能の大部分が失われるまで症状が出ません。また、元気なうちの数値を記録しておくと、将来「その子にとっての異常」を判断する基準になります。
Q. 病院に連れて行くこと自体がストレスになりませんか?
とくに猫ではそのとおりです。キャリーを普段から部屋に出しておく、短時間で済むよう検査を絞る、待ち時間を減らすなどの配慮ができます。ご相談いただければ、その子の負担が少ない進め方を一緒に考えます。
Q. 何歳まで麻酔をかけられますか?
年齢そのものより、心臓・腎臓・肝臓の状態で判断します。14歳でも問題なく歯の処置ができる子もいれば、8歳でも慎重になる子もいます。術前検査で確認したうえで、やるメリットとリスクを比べてご相談します。
まとめ
- シニア期は小型犬・猫7歳、大型犬5〜6歳から
- 加齢は年単位でゆっくり。数か月で変わったなら病気を疑う
- 「増えている」変化(水・尿・食欲・夜鳴き・体重)は加齢では説明できない
- 動かなくなった原因の多くは痛み。治療で減らせます
- 猫の夜鳴きは、認知症より先に甲状腺の病気を疑う
- シニア健診は半年に1回。猫は10歳から甲状腺ホルモンも
- 月1回の体重測定が、もっとも費用対効果の高い習慣です

南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、愛犬・愛猫のシニア期のことでお悩みでしたら、アルプス動物病院までお気軽にご相談ください(TEL: 055-269-5539)。「年のせいかどうか知りたい」というご相談も歓迎します。
この記事の監修:アルプス動物病院 院長
最新情報は、下記の公式LINE・Instagramからご覧いただけます📱✨


