犬猫の咳・呼吸が苦しいとき|音と呼吸数で見分けるサインと緊急の目安を獣医師が解説

「ケホケホと咳をしている」「寝ているのに呼吸が速い気がする」「ガーガーとガチョウみたいな音がする」——咳と呼吸の変化は、軽いもので済むこともあれば、その日のうちに処置が必要なこともあります。

判断の手がかりは「音」と「回数」と「姿勢」の3つです。この記事では、その見方と、すぐ病院へ来てほしいサインをまとめました。

【緊急】この状態はすぐにご連絡ください

先にお伝えします。次の様子があれば、様子をみずにお電話ください。

  • 猫が口を開けて呼吸している(猫の口呼吸は、それだけで緊急です。後述します)
  • 舌や歯ぐきが紫色っぽい、白い
  • お腹を大きく使って苦しそうに呼吸している
  • 首を前に伸ばし、肘を張った姿勢をとっている
  • 横になって休めない、座ったまま動かない
  • 呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューと音がする
  • ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い

来院時は興奮させないことが大切です。呼吸が苦しい子は、慌てて走り回らせるだけで状態が悪化します。キャリーに入れて静かに運んでください。

猫の口呼吸は、犬とはまったく意味が違います

ここは特に知っておいていただきたい点です。

犬は暑いときや運動後に口を開けてハアハアします(パンティング)。これは体温を下げるための正常な行動です。

一方猫は、健康なら口を開けて呼吸しません。猫が口呼吸をしているのは、鼻だけでは酸素が足りなくなっている状態です。激しく遊んだ直後に一時的に出て、数分で収まるなら様子をみてよいこともありますが、それ以外の口呼吸は肺や心臓に問題がある可能性が高いと考えてください。

「猫が口を開けて息をしている」は、電話してきていただいてよいサインです。

おうちで測れる「安静時呼吸数」

呼吸の異常を数字で捉えられる、唯一の方法です。心臓病の子では特に重要な指標になります。

  • 眠っているときに測ります(起きているときの数字は使えません)
  • 胸が上下する回数を15秒数えます(1往復で1回)
  • ×4 して、1分あたりの回数にします

目安は犬猫とも1分間に20〜30回程度です。40回を超えていたら要注意と考えてください。

大切なのは、その子のふだんの数字を知っておくことです。元気なうちに何度か測っておくと、増えたときにすぐ気づけます。

→ 犬の僧帽弁閉鎖不全症|咳・疲れやすさのサインから検査・治療・日常管理

その「咳」、本当に咳ですか

診察室でよくあるのが、咳ではないものを咳として相談されるケースです。逆に、咳なのに「吐きそう」と受け取られていることもあります。

  • 咳:喉から「ケホッ」「コンコン」。首を伸ばして前かがみになることが多い
  • えずき:咳のあとに「オエッ」と泡状のものを吐くことがあり、吐き戻しと混同されます。ただしこれも咳の一種です
  • 逆くしゃみ:鼻から「ブーブー」「フガフガ」と勢いよく空気を吸い込む発作。数十秒で収まり、ほとんどは心配いりません
  • くしゃみ:鼻から外へ息を出す。鼻炎や猫風邪で多い

見分けがつかないときは、スマホで動画を撮ってきてください。これがいちばん確実です。診察室では症状が出ないことがほとんどなので、動画があると診断の精度が大きく変わります。

咳の「音」と「タイミング」で原因を絞る

ガーガー、ガチョウの鳴き声のような咳 → 気管虚脱

空気の通り道である気管がつぶれやすくなる病気で、小型犬に多く見られます。チワワ、ポメラニアン、トイプードル、ヨークシャーテリアなど。

特徴は、興奮したとき、首輪を引っ張ったとき、暑い日に出やすいこと。ゆっくり進行する病気で、「年々咳が増えてきた」という経過をたどります。

乾いた咳が夜間・明け方・興奮時 → 心臓病

中〜高齢の小型犬で多いパターンです。心臓が大きくなって気管を押し上げるため咳が出ます。「夜中にコホコホする」は心臓を疑う重要な手がかりです。

進行すると肺に水がたまり(肺水腫)、呼吸困難になります。ここまで来ると緊急です。

湿った咳、発熱を伴う → 肺炎・気管支炎

ゴロゴロ、ズルズルという湿った音がする咳です。元気や食欲の低下を伴うことが多く、早めの受診が必要です。

乾いた咳が続く、他の犬と接触歴がある → ケンネルコフ

ウイルスや細菌による感染症で、ペットホテル、ドッグラン、トリミングサロンなどでうつります。混合ワクチンで予防できる部分が大きい病気です。

→ 犬猫のワクチンと感染症予防 完全ガイド|種類・スケジュール・費用

猫でゼーゼー、発作のように苦しがる → 猫喘息

アレルギー性の炎症で気道が狭くなる病気です。発作のときはうずくまって首を伸ばし、肩で息をする特徴的な姿勢をとります。ホコリ、タバコの煙、香料、猫砂の粉が引き金になります。

猫で「吐きそうな動き」をする → 咳か、毛玉か

猫が前かがみになって体を波打たせる動きは、毛玉を吐こうとしているようにも、咳をしているようにも見えます。何も出てこない場合は咳の可能性があります。喘息を毛玉と思い込んで、何年も気づかれていないことがあります。

冬に咳が増える理由

「寒くなってから咳をするようになった」という来院は、実際に冬に増えます。

  • 空気の乾燥:暖房で室内の湿度が下がり、気道の粘膜が刺激を受けます
  • 冷たい空気:気管虚脱のある子では、冷気そのものが咳の引き金になります
  • 暖かい室内と寒い屋外の温度差:散歩に出た瞬間に咳き込むことがあります

ただし「冬だから仕方ない」で済ませないでください。乾燥が引き金になっているだけで、背景に気管虚脱や心臓病が隠れていることがあります。季節の変化は、もともとあった問題を表に出しているだけかもしれません。

【チェックリスト】受診の目安

様子をみてよいこと

  • 咳が1〜2回出ただけで、その後は普通に過ごしている
  • 逆くしゃみの発作が数十秒で収まり、すぐ元気になる
  • 遊んだ直後に犬がハアハアしているが、休めば収まる
  • 元気・食欲が変わらない

受診してください

  • 咳が数日以上続いている
  • 夜間や明け方にひどくなる
  • 興奮や運動のたびに必ず咳が出る
  • 年々、咳が出やすくなっている
  • 安静時の呼吸数が40回を超える
  • 元気や食欲が落ちてきた
  • 猫が口を開けて呼吸している(緊急)
  • 舌が紫っぽい、横になれない(緊急)

当院での検査

まず聴診で、心雑音の有無、肺の音、気管の音を確認します。呼吸数と呼吸の仕方、粘膜の色もあわせて見ます。

そのうえで必要に応じて、

  • レントゲン検査:心臓の大きさ、肺の状態、気管の形を確認します
  • 心臓超音波(心エコー)検査:心臓が原因かどうかの判断に使います
  • 血液検査:炎症、感染、貧血、全身状態を確認します

ただし呼吸が苦しい状態では、検査そのものが負担になります。その場合はまず酸素室で落ち着かせ、安定してから検査を進めます。無理に押さえつけて撮影することはしません。

費用について:検査の内容によって変わります。事前にご説明してから進めますので、お電話でお気軽にお問い合わせください(TEL: 055-269-5539)。

おうちでできること

  • 首輪ではなくハーネスを使う:気管虚脱のある子には、これだけで効果があります
  • 室内の湿度を40〜60%に保つ:加湿器、濡れタオルを干すだけでも変わります
  • タバコの煙、香水、消臭スプレー、アロマを避ける:猫喘息では特に重要です
  • 体重管理:太ると気道も心臓も負担が増えます
  • 興奮させすぎない:来客時などに落ち着ける場所を用意してください
  • 安静時呼吸数を記録する:週1回でも、変化に早く気づけます

→ 犬猫の食事ガイド|フードの選び方・適量の見極め方
→ 犬・猫の健康チェック完全ガイド|毎日の観察と触診、定期健診の頻度と内容

よくあるご質問

Q. 市販の咳止めを飲ませてもいいですか?

やめてください。人用の薬には犬猫で中毒を起こす成分があります。また、心臓が原因の咳には一般的な咳止めは効きません。原因を確かめないまま咳だけを抑えると、悪化に気づくのが遅れます。

Q. 気管虚脱は治りますか?

つぶれた気管を元に戻すことはできないため、完治を目指す病気ではありません。ただし薬と生活の工夫で、症状をかなり抑えられます。ハーネスへの変更と体重管理だけでも楽になる子がいます。進行性の病気なので、早く対策を始めるほど差が出ます。

Q. 咳は出ていないのに、呼吸だけ速い気がします

咳より呼吸数の変化のほうが先に出ることがあります。とくに猫では、咳がないまま胸に水がたまっていることもあります。安静時呼吸数を測って40回を超えるなら、咳がなくてもご相談ください。

Q. 逆くしゃみは放っておいて大丈夫ですか?

ほとんどは心配いりません。発作中に喉を軽くなでる、鼻先を軽く塞ぐと早く収まることがあります。ただし回数が急に増えた、長く続くようになった場合は、鼻の奥に問題がある可能性もあるので一度ご相談ください。

まとめ

  • 猫の口呼吸は緊急。犬のハアハアとはまったく意味が違います
  • 舌が紫・お腹を使った呼吸・横になれないは、すぐご連絡を
  • 安静時呼吸数は数字で追える唯一の指標。40回超は要注意
  • 咳の音とタイミングが診断の手がかり。ガーガー=気管虚脱、夜間の乾いた咳=心臓
  • えずき・逆くしゃみとの区別がつかないときは動画を撮ってください
  • 冬の咳を「寒いから」で済ませない。背景に病気が隠れていることがあります
  • 首輪をハーネスに変える、湿度を保つ、体重を管理する。これだけでも変わります

南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、愛犬・愛猫の咳や呼吸が気になる場合は、アルプス動物病院までご相談ください(TEL: 055-269-5539)。呼吸が苦しそうなときは、お電話のうえすぐにお越しください。

この記事の監修:アルプス動物病院 院長

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