犬の乳腺腫瘍とは?しこりのセルフチェック・良性と悪性・手術と避妊の関係を獣医師が解説

こんにちは、南アルプス市のアルプス動物病院です。

「お腹をなでていたら、コリッとしたしこりに触れた」——犬の乳腺腫瘍は、飼い主さんのスキンシップで見つかることが最も多い腫瘍です。そして、中高齢のメス犬に発生する腫瘍の中で最も多いもののひとつでもあります。

犬の乳腺腫瘍は「約半数が良性、約半数が悪性」といわれます。つまり、触っただけでは良し悪しは分かりません。この記事では、しこりのセルフチェックの方法から、検査・手術、そして避妊手術との深い関係まで、まとめて解説します。

乳腺腫瘍とはどんな病気?

乳腺腫瘍は、乳首の周囲にある乳腺組織にできる腫瘍です。犬には左右あわせて10個前後の乳頭があり、そのラインに沿ったどこにでも発生します。1つだけでなく、複数の乳腺に同時にできることも珍しくありません。

しこりが小さいうちは体調に変化がないことがほとんどで、「元気だから大丈夫」と様子を見てしまいがちです。しかし悪性の場合、周囲への浸潤や肺などへの転移が起こりうるため、「小さいうちに調べる」ことが予後を大きく左右します

進行するとどうなる?

悪性腫瘍では、急に大きくなる、皮膚が赤くなる・熱を持つ、表面が破れて出血する(自壊)といった変化が見られます。肺に転移すると、咳や呼吸の異常、元気消失などが現れます。ここまで進む前に見つけることが何より重要です。

月1回の「乳腺セルフチェック」を習慣に

早期発見の主役は、日々のスキンシップです。月に1回、リラックスしているときに次の要領で触ってみてください。

  1. 仰向けまたは横向きで、胸からお腹にかけて、乳頭のラインに沿って指の腹でやさしくなでる
  2. 左右それぞれ、胸側から後ろ足の付け根まで確認する
  3. 「コリッとした硬さ」「左右で感触が違う場所」「以前より大きくなったしこり」がないかを見る

数ミリの小さなものでも、見つけたら様子を見ずにご相談ください。「まだ小さいから」と待つメリットは何もなく、小さいうちに調べる・取るメリットは非常に大きいのがこの病気です。

乳腺セルフチェック

避妊手術との深い関係

乳腺腫瘍は女性ホルモンの影響を強く受ける腫瘍です。このため、初回発情を迎える前に避妊手術を行うと、発生リスクを大きく下げられることが知られています。発情を重ねるごとに予防効果は薄れていくため、繁殖の予定がない場合は、早い時期の避妊手術が最大の予防策になります。

「もう成犬だから避妊しても意味がない」わけではありません。腫瘍予防の効果は下がっても、子宮蓄膿症など他の病気の予防にはなります。避妊のタイミングや考え方については、こちらの記事もご覧ください。 (→避妊手術はなぜ行う?

当院で行う検査

  • 触診: しこりの大きさ・硬さ・数、周囲との癒着を確認します
  • 細胞診: 細い針でしこりから細胞を採取し、顕微鏡で調べます。無麻酔で行える負担の少ない検査です(8,415円)。乳腺のしこりには腫瘍以外のもの(炎症など)もあるため、方針を決める重要な手がかりになります
  • レントゲン・超音波検査: 肺やリンパ節への転移がないか、全身の状態を確認します
  • 病理検査: 良性・悪性の最終判定は、摘出した腫瘍の病理組織検査で行います

治療の中心は外科手術

乳腺腫瘍の基本治療は外科的切除です。しこりの大きさ・数・位置によって、しこり周辺のみの切除から、片側の乳腺を広く切除する術式まで、その子に合った範囲を選択します。未避妊の子では、再発予防の観点から避妊手術を同時に行うことも一般的です。

しこりが小さい段階で手術するほど、切除範囲が小さく済み、体への負担も軽く、良好な経過が期待できます。手術の内容と費用は、しこりの状態によって変わるため、検査結果をもとに丁寧にご説明します

猫の乳腺腫瘍は「より要注意」です

猫にも乳腺腫瘍はできますが、犬と大きく違う点があります。猫の乳腺腫瘍は8〜9割が悪性といわれ、進行も速い傾向があります。猫のお腹にしこりを見つけた場合は、犬以上に急いでご相談ください。猫も早期の避妊手術で発生リスクを大きく下げられます。

よくあるご質問

Q. 小さいしこりです。大きくなってから受診でもいいですか? おすすめできません。小さい段階で調べれば、良性なら安心でき、悪性でも小さな手術で済む可能性が高くなります。「大きくなるのを待つ」ことにメリットはありません。

Q. 高齢ですが手術できますか? 年齢だけで手術を諦める必要はありません。術前に血液検査・胸部レントゲン・心臓の評価などを行い、麻酔リスクを個別に判断します。持病がある場合の選択肢も含めて、一緒に方針を考えましょう。

Q. 手術しないとどうなりますか? 良性であればゆっくり大きくなるだけのこともありますが、悪性の場合は増大・自壊・転移のリスクがあります。問題は「調べなければどちらか分からない」ことです。手術をしない選択をする場合でも、まず検査で状態を把握しておくことが大切です。

Q. 避妊手術をしていれば乳腺腫瘍にはなりませんか? リスクは大きく下がりますが、ゼロにはなりません。避妊済みの子でも、しこりを見つけたら同じように受診してください。

まとめ

  • 乳腺腫瘍はメス犬で最も多い腫瘍のひとつ。約半数が悪性です
  • 月1回の乳腺セルフチェックで早期発見を
  • 検査は負担の少ない細胞診から。小さいうちの対応が予後を分けます
  • 初回発情前の避妊手術が最大の予防。猫はさらに悪性率が高く要注意

南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、胸やお腹のしこりに気づいたら、アルプス動物病院までお早めにご相談ください(TEL: 055-269-5539)。

この記事の監修: アルプス動物病院 院長

最新情報は、下記の公式LINE・Instagramからご覧いただけます📱✨