犬猫の嘔吐・下痢|様子見でよい場合とすぐ受診すべきサインの見分け方を獣医師が解説
嘔吐と下痢は、犬猫でもっともご相談の多い症状です。そして同時に、「ほうっておいて大丈夫なもの」と「すぐ病院へ来てほしいもの」の差がいちばん大きい症状でもあります。
一度吐いただけですぐ元気になる子もいれば、同じ「吐いた」でも数時間を争うケースもあります。この記事では、その見分け方をチェックリストの形でまとめました。迷ったときの判断材料にしてください。
【チェックリスト】様子をみてよい嘔吐・下痢
次の条件がすべて当てはまるなら、半日ほど様子をみて大丈夫なことが多いです。
- 吐いたのは1〜2回で、その後は落ち着いている
- 吐いたあともケロッとしていて、元気に動いている
- 下痢はやわらかい程度で、水様便ではない
- 血や黒いものが混じっていない
- 水を飲めていて、飲んですぐ吐くことがない
- お腹を触っても痛がらない
- 成犬・成猫で、持病がない
この場合は、食事を1回抜くか量を減らして胃腸を休ませ、水は少量ずつ飲めるようにしてあげてください。絶食は長くても半日までです。丸一日以上の絶食・絶水はかえって体力を奪います。
【チェックリスト】すぐに受診してください
ひとつでも当てはまったら、様子をみずにご連絡ください。
- 何度も繰り返し吐く(1日に3回以上、または吐こうとして何も出ない)
- 水を飲んでもすぐ吐く、飲めない
- 吐物や便に血が混じる、便が黒いタール状(上部消化管の出血を疑います)
- ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い
- お腹を触ると嫌がる、背中を丸める、「祈りのポーズ」をとる
- 何かを飲み込んだ・食べた心当たりがある
- 歯ぐきが白い、または紫っぽい
- 子犬・子猫、シニア、持病のある子の嘔吐や下痢
- 下痢が3日以上続く
とくに注意していただきたいのが「吐こうとするのに何も出ない」という状態です。大型犬では胃がねじれる胃拡張胃捻転の可能性があり、数時間で命に関わります。お腹が張っていて落ち着きがない場合は、迷わずご連絡ください。
また、子犬・子猫は体力の余力がありません。成犬なら様子をみる程度の下痢でも、子犬では半日で脱水が進みます。「若いから大丈夫」ではなく「若いから危ない」と考えてください。
よくある原因
食事・誤食によるもの
フードの急な切り替え、脂っこい食べ物、人の食事のつまみ食い、ゴミあさり。いちばん多い原因です。おもちゃやひもなどを飲み込んだ場合は、腸に詰まって手術が必要になることもあります。ひも状のものは腸を傷つけるため特に危険です。
→ 犬猫の誤飲・誤食 完全ガイド|危険な食べ物リストと対処法
感染症・寄生虫
パルボウイルスなどのウイルス性腸炎、細菌感染、ジアルジアやコクシジウムといった寄生虫。子犬・子猫で重症化しやすく、パルボは命に関わります。ワクチンと駆虫で防げる部分が大きいので、予防をしておくことがそのまま対策になります。
内臓の病気
膵炎、腎臓病、肝臓病、ホルモンの病気でも嘔吐や下痢が起こります。「吐く日が増えてきた」「下痢が治りきらない」という慢性的な経過では、胃腸ではなく内臓の病気を疑って検査をします。
→ 犬の膵炎とは?症状・原因・治療・低脂肪食での再発予防
→ 猫の慢性腎臓病(CKD)とは?初期症状・検査・食事療法
ストレス
引っ越し、来客、環境の変化。胃腸はストレスの影響を受けやすい臓器です。ただし「ストレスのせい」と判断できるのは、他の原因を除外したあとです。
→ 犬・猫のストレスサインと体調不良|見逃しやすい変化・受診の目安
猫の嘔吐について、もうひとつ
「猫はよく吐く動物だから」と言われることがあります。毛玉を吐くこと自体は異常ではありません。ただし月に何度も吐く、食べてすぐ吐く、体重が減ってきたという場合は別です。慢性的な消化器の病気や、甲状腺の病気が隠れていることがあります。
「よく吐く子だから」で片づけず、吐いた回数を記録してご相談ください。頻度が分かると診断が大きく進みます。
やってはいけない対応
- 人の薬を飲ませる:下痢止めも胃薬も、犬猫では中毒を起こすものがあります
- 丸一日以上の絶食・絶水:とくに猫では、食べない状態が続くこと自体が肝臓に負担をかけます
- 自己判断で下痢止めを使う:感染性の下痢では、体が外に出そうとしているものを止めてしまい悪化します
- 無理に吐かせる:誤食でも、ものによっては吐かせると食道を傷つけます。まず電話でご相談ください
当院での検査と治療
問診と身体検査で全身状態と脱水の程度を確認し、お腹を触って痛みの部位や異物の有無をみます。そのうえで必要に応じて、便検査、血液検査、レントゲン、超音波検査を行います。
治療は、脱水と電解質の補正が中心になります。点滴で水分を戻すだけで元気が戻る子も多くいます。吐き気止め、整腸剤、場合によっては抗菌薬を組み合わせ、重症であれば入院して管理します。
費用について:検査と治療の内容によって変わります。事前にご説明してから進めますので、お電話でお気軽にお問い合わせください(TEL: 055-269-5539)。
来院時にお持ちいただけると助かるもの
- 便(できるだけ新しいもの):ラップやビニール袋に包んで。寄生虫の検査ができます
- 吐物の写真:色、量、内容物(フード、液体、異物)が分かると判断が早くなります
- いつから・何回・何を食べたかのメモ
- 誤食が疑われる場合は、食べた物のパッケージや同じ物
予防としてできること
- フードの切り替えは1週間かけて少しずつ混ぜる
- 人の食べ物、脂っこいものを与えない
- ゴミ箱はふた付きに。ひもや小物は届かない場所へ
- ワクチンと寄生虫の予防を続ける
- 早食いの子は、早食い防止皿や回数を分ける工夫を
よくあるご質問
Q. 吐いたあと元気なら、受診しなくてよいですか?
1〜2回で落ち着き、上のチェックリストに全部当てはまるなら、半日様子をみて構いません。ただし「元気そうに見える」は、痛みを隠しているだけのことがあります。とくに猫は我慢する動物です。繰り返す、食べない、丸まって動かないなら受診してください。
Q. 水も飲ませないほうがいいですか?
いいえ。水は少量ずつ、こまめに飲ませてください。一気に飲むとまた吐くので、少しずつがコツです。飲んですぐ吐いてしまう場合は、脱水が進むので受診が必要です。
Q. 草を食べて吐くのは大丈夫ですか?
犬猫が草を食べる理由ははっきり分かっていませんが、それ自体で病気ということはありません。ただし草を食べる頻度が急に増えた場合、気持ち悪さがあるサインのこともあります。あわせて食欲や便の様子を確認してください。除草剤のかかった草は危険なので、散歩中は注意が必要です。
Q. 下痢が続いていますが、元気はあります。待っていいですか?
元気があっても、3日以上続く下痢は一度みせてください。寄生虫や食物アレルギー、慢性の腸炎が背景にあることがあります。便を持ってきていただければ、その場で検査できます。
まとめ
- 1〜2回で落ち着き、元気・食欲があり、血が混じらないなら半日様子見でよいことが多い
- 繰り返す/血が混じる/水も飲めない/ぐったり/誤食の心当たりは受診のサイン
- 吐こうとして何も出ないときは緊急。大型犬では胃捻転の可能性があります
- 子犬・子猫・シニア・持病のある子は、同じ症状でも早めに
- 人の薬、丸一日の絶食、自己判断の下痢止めは避ける
- 便と吐物の写真、食べたもののメモが診断を早めます
南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、愛犬・愛猫の嘔吐や下痢でお困りのときは、アルプス動物病院までお早めにご相談ください(TEL: 055-269-5539)。
この記事の監修:アルプス動物病院 院長


