🦷第3回:歯科治療が必要なサインと、動物病院でできること
はじめに
前回までは、ご家庭でできるデンタルケアや歯みがきの始め方について紹介しました。しかし、家庭でのケアだけでは防ぎきれない問題や、すでに歯周病が進行しているケースも少なくありません。第3回となる今回は、「どんな状態なら歯科治療が必要なのか」「病院では具体的にどのような処置を行うのか」を中心に、より踏み込んだ内容をお話しします。
歯科治療が必要なサイン
毎日の中で気づきやすい変化
歯周病や口腔トラブルが進んでくると、次のような変化が見られることがあります。
- 口臭が以前より強くなった
- よだれの量が増えた
- 片側だけで食べるようになった
- 口を触られるのを嫌がる
- 柔らかいごはんを好むようになる
- 食べるスピードが極端に遅くなる
これらは「痛み」や「炎症」がある時に見られやすいサインです。
見た目で気づくサイン
- 歯ぐきが赤い、腫れている
- 歯石が厚く付着している
- 歯がぐらついている
- 歯ぐきから出血する
外から見て分かる状態の場合は、歯周病が中程度〜重度に進行している可能性があります。
進行すると起こるトラブル
歯周病が重度になると、歯を支える骨が溶けたり、歯根部に膿がたまったりすることがあります。最悪の場合、あごの骨に炎症が広がることもあり、生活の質が大きく低下します。痛みが長く続くと、食事量の低下や体重の減少にもつながります。
動物病院でできる歯科処置
麻酔下でのスケーリング(歯石除去)
動物の歯科治療の基本は、全身麻酔下で行うスケーリングです。無麻酔で表面の歯石だけを削り落としても、歯ぐきの奥の汚れは残ってしまい、治療にはなりません。麻酔下で行うことで、
- 目に見える歯石の除去
- 歯周ポケットの奥深くのクリーニング
- 汚れが再付着しにくいようにするポリッシング(仕上げ磨き)
を安全かつ確実に行うことができます。
レントゲンや歯科検査の重要性
人と同じように、犬猫も歯科処置の前に口腔内の状態を詳しく調べます。歯の根が折れていないか、骨の炎症がないかなど、肉眼では分からない情報はレントゲンで確認する必要があります。
抜歯が必要になるケース
歯周病が重度に進行した歯は、残しておくと痛みが続くだけでなく、感染が広がる危険もあります。必要な場合は抜歯を行い、痛みや炎症の原因を取り除きます。
麻酔についての不安に答えます
麻酔前の検査でリスクを低減
高齢の子や持病のある子については「麻酔は大丈夫?」と心配される飼い主さんも多いです。動物病院では、麻酔前に血液検査・心臓の評価・レントゲン検査などを行い、その子に合った麻酔方法を選びます。これにより安全性が大きく向上します。
処置中のモニタリング
手術中は酸素濃度、呼吸、心拍、血圧などを細かく監視し、安全な状態を保ちながら処置を進めます。
治療後のケアがとても大切
家庭でのケアで再発を防ぐ
どんなにきれいに治療しても、その後のケアを怠ると歯石はまた付着してしまいます。治療後の口内環境を保つためには、前回紹介した家庭での歯みがきが非常に重要です。
生活の質が大きく改善する
歯の痛みがなくなると、表情が明るくなったり、ごはんをよく食べるようになったりと、目に見えて変化が現れます。高齢の子では「もっと早くやってあげればよかった」と言われることも少なくありません。
シリーズのまとめ
3回にわたり、デンタルケアの重要性・家庭でできるケア方法・病院での歯科処置について紹介しました。歯の健康は、食事だけでなく全身の健康にも深くつながる大切な要素です。気になることや「うちの子は大丈夫かな?」という不安があれば、いつでもお気軽に当院へご相談ください。今後もアルプス動物病院は、ご家族の健康を支える総合診療の一環として歯科診療にも力を入れてまいります。
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