犬猫の尿路結石(膀胱結石)とは?ストルバイトとシュウ酸カルシウムの違い・治療・食事を獣医師が解説
こんにちは、南アルプス市のアルプス動物病院です。
「トイレの回数が増えた」「おしっこに血が混じる」「排尿のとき痛そうに鳴く」——こうした排尿トラブルの原因としてとても多いのが、膀胱の中に石ができる尿路結石(膀胱結石)です。
尿路結石には大きく2つのタイプがあり、「食事で溶かせる石」と「溶かせない石」があることをご存じでしょうか。どちらなのかによって治療方針が正反対になるため、正しい診断がとても重要です。この記事では、結石のタイプの違いから症状・検査・治療・再発予防まで、まとめて解説します。
まず大切なこと — 「尿が出ない」は緊急です
結石が尿道に詰まると、尿がまったく出なくなる尿道閉塞を起こすことがあります。特にオスの犬猫は尿道が細いため詰まりやすく、数時間〜半日で命に関わります。何度もトイレに行くのに尿が出ていない場合は、様子を見ずにすぐご連絡ください。 (→ 犬のおしっこが出ない?緊急性の高い尿道閉塞のサインと原因)
尿路結石とはどんな病気?
尿の中にはミネラル成分が溶け込んでいます。尿が濃くなったり、pH(酸性・アルカリ性)のバランスが崩れたりすると、ミネラルが結晶となって析出し、それが集まって石になります。砂粒のような結晶の段階から、数cmの石になることもあります。
結晶や結石が膀胱の壁を刺激することで、膀胱炎のような症状(頻尿・血尿・痛み)が現れます。
2大タイプの違い — ここが治療の分かれ道
| ストルバイト結石 | シュウ酸カルシウム結石 | |
|---|---|---|
| 正式名称 | リン酸アンモニウムマグネシウム結石 | シュウ酸カルシウム結石 |
| できやすい尿 | アルカリ性に傾いた尿 | 酸性に傾いた尿 |
| 関連しやすい要因 | 細菌性膀胱炎の繰り返し、食事内容 | 体質、食事内容、水分不足 |
| 食事(療法食)で溶けるか | 溶かせる可能性が高い | 溶けない |
| 主な治療 | 溶解用の療法食+感染があれば抗生剤 | 大きさ・位置により外科手術で摘出 |
同じ「膀胱の石」でも、対応はこれだけ違います。だからこそ、どちらのタイプかを見極める検査が治療の出発点になります。
どんな子がなりやすい?
- 水をあまり飲まない子(尿が濃くなりやすい)
- 膀胱炎を繰り返している子(特にストルバイト)
- 肥満傾向の子
- 犬では小型犬に多く、猫では中高齢での発見が多い傾向
- オスは「できやすさ」より「詰まりやすさ」の面で要注意
気づいてあげたいサイン
- トイレの回数が増える、少量ずつ何度も排尿する
- 血尿が出る
- 排尿時に鳴く、痛がる、落ち着きがない
- 排尿姿勢をとるのに出ていない(→緊急)
初期は「なんとなくトイレが近い」程度のこともあり、見逃されやすい病気です。猫の排尿トラブル全般のサインについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 (→猫の下部尿路疾患(FLUTD)完全ガイド )
当院で行う検査
- 尿検査(1,650円): 結晶の種類・pH・細菌・血液の混入を確認します。結晶の種類がわかれば、どのタイプの結石かの重要な手がかりになります
- 超音波(エコー)検査(1,100円〜): 膀胱内の結石の有無・大きさ・数を直接確認します。レントゲンに写らないタイプの結石も見つけられます
- レントゲン検査: 結石の位置と数、尿道に詰まりかけていないかを評価します
症状が軽いうちに検査で見つかれば、それだけ治療の選択肢が広がります。自宅で採った尿の持ち込みも可能です(採尿後2〜3時間以内を目安にお持ちください)。
治療 — タイプ別のアプローチ
ストルバイト結石: 療法食で「溶かす」
結石を溶かす専用の療法食で、尿のpHを整えながら数週間〜数ヶ月かけて溶解を目指します。体への負担が少ない治療ですが、途中でやめたり、おやつや他のフードを混ぜたりすると効果が落ちるため、溶けたことを検査で確認するまで根気よく続けることが大切です。細菌感染を伴う場合は抗生剤も併用します。
シュウ酸カルシウム結石: 手術で「取り除く」
食事では溶けないため、症状の程度や結石の大きさ・位置によって外科的な摘出を検討します。小さく症状がない場合は、定期的な画像検査で経過を見ることもあります。尿道に詰まっている場合は緊急処置が必要です。

再発予防 — 「溶けた・取れた」がゴールではありません
尿路結石はとても再発しやすい病気です。治療後は次の管理を続けましょう。
- 水分摂取を増やす: ウェットフードの活用、水飲み場を複数設置するなど。尿が薄ければ結晶はできにくくなります
- 維持用の療法食を続ける: 自己判断で通常食に戻さないでください。おやつの内容も影響します
- 定期的な尿検査: 症状がなくても、数ヶ月に1回の尿検査で結晶の再発を早期にキャッチできます
- トイレを清潔に保つ: 膀胱炎の予防が、結石(特にストルバイト)の予防につながります
よくあるご質問
Q. 療法食でどのくらいの期間で溶けますか? 結石の大きさによりますが、数週間〜2、3ヶ月が目安です。溶け具合はエコーやレントゲンで確認しながら進めます。
Q. 症状がなければ、結石があっても放置していいですか? おすすめできません。結石は膀胱の中で少しずつ大きくなったり、ある日突然尿道に移動して閉塞を起こしたりします。特にオスの子は「無症状の結石」が時限爆弾になりえます。
Q. 療法食以外のおやつをあげてもいいですか? おやつは尿のpHバランスを崩す原因になります。治療中は基本的に療法食のみ、予防期のおやつ選びは診察時にご相談ください。
Q. 一度ストルバイトになった子は、また同じ石ができますか? 同じ石が再発しやすい一方、療法食で尿を酸性に傾けすぎると今度はシュウ酸カルシウムができやすくなることもあります。だからこそ、定期的な尿検査でバランスを見ながらの管理が重要です。
まとめ
- 尿路結石は「溶かせるストルバイト」と「溶かせないシュウ酸カルシウム」の2大タイプ
- タイプの見極めが治療の出発点。尿検査+画像検査で診断します
- 「尿が出ない」は数時間で命に関わる緊急事態
- 治療後も、水分・食事・定期尿検査で再発予防を
南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、愛犬・愛猫の排尿トラブルや結石の食事管理のご相談は、アルプス動物病院までお気軽にどうぞ(TEL: 055-269-5539)。
この記事の監修: アルプス動物病院 院長


