猫の慢性腎臓病(CKD)とは?初期症状・検査・食事療法と進行を抑える管理を獣医師が解説
「最近よく水を飲む」「トイレの回数が増えた」「なんとなく痩せてきた」——シニア期の猫でこうした変化があったら、まず疑うべきなのが慢性腎臓病(CKD)です。
猫にとって腎臓病は、もっとも身近な病気のひとつです。15歳以上では2頭に1頭が何らかの腎臓のトラブルを抱えているともいわれます。困るのは、症状が出たときにはすでに腎機能の多くが失われていることです。
一方で、早く見つけて管理を始めれば、進行をゆるやかにして穏やかな時間を長く保てます。この記事では、初期サインの見分け方、検査でわかること、治療と自宅ケアまでをまとめました。
猫の慢性腎臓病とは
腎臓は、血液から老廃物をこし取って尿として捨て、水分やミネラルのバランスを調整する臓器です。それだけでなく、血圧の調整や、赤血球をつくるホルモンの分泌にも関わっています。
慢性腎臓病では、この働きが数か月から数年かけて少しずつ失われていきます。一度壊れた腎臓の細胞は元に戻りません。だからこそ、残っている機能をいかに長く保つかが治療の目標になります。
なぜ気づいたときには進んでいるのか
腎臓は予備能力がとても高い臓器です。そのため、機能がかなり低下するまで目立った症状が出ません。血液検査の数値に明らかな異常が出る頃には、腎臓の働きの大部分が失われていることも少なくありません。
さらに猫は、弱っている姿を本能的に隠す動物です。見た目が元気でも、体の中では病気が進んでいることがあります。
原因とリスク
多くは加齢による腎細胞の老化です。10歳を過ぎると発症率が高くなります。そのほか、次のような要因が関わることがあります。
- 慢性的な水分不足(もともと猫は水を飲む量が少ない動物です)
- 高血圧
- 尿路結石や膀胱炎を繰り返している
- 感染症(猫免疫不全ウイルスなど)
- 歯周病などの慢性的な炎症
初期に見られるサイン
次の変化は、腎臓病のいちばん早い段階で現れやすいものです。
- 水を飲む量が増えた(水飲み場に行く回数、水の減り方)
- 尿の量が増えた(固まる砂なら、かたまりが大きくなる)
- 体重が少しずつ減ってきた
- 毛づやが悪くなった、毛づくろいをしなくなった
どれも「歳のせい」「夏だから」と思われやすい変化です。とくに飲水量と尿量の増加は、腎臓病でもっとも早く出るサインなので、見逃さないでください。
進行すると現れる症状
- 食欲が落ちる、フードの前まで行くのに食べない
- 嘔吐が増える
- 口臭が強くなる(アンモニアのようなにおい)
- 寝ている時間が増える、隠れるようになる
- 脱水(首の後ろの皮膚をつまむと戻りが遅い)
- 口内炎ができる
【チェックリスト】受診をおすすめするとき
- 水を飲む量・尿の量が明らかに増えた
- 7歳以上で、ここ半年ほど体重が減ってきている
- 嘔吐が週に何度もある
- まる1日以上食べていない(猫では急いでください)
- 口が臭う、よだれが増えた
- ぐったりして動かない
なお、飲水量と尿量が増える症状は、糖尿病や甲状腺機能亢進症でも起こります。どれもシニア猫に多い病気で、見分けるには検査が必要です。
当院で行う検査
血液検査
BUN(尿素窒素)やクレアチニンを測定して腎臓の働きを評価します。あわせて貧血の有無、電解質やリンのバランスも確認します。
近年はSDMAという項目も使われます。従来の数値より早い段階で腎機能の低下をとらえられるため、早期発見に役立ちます。
尿検査
尿の濃さ(比重)、タンパクの有無、沈渣を調べます。腎臓病の初期では、血液検査より先に尿の異常が現れることがあります。「尿を濃縮できなくなる」のが腎臓病の最初の変化だからです。血液検査だけで済ませず、尿もあわせて調べることをおすすめします。
画像検査・血圧測定
超音波検査で腎臓の大きさ・形・内部構造を確認します。慢性腎臓病では腎臓が小さく萎縮していることが多く、進行度の判断材料になります。結石の有無も確認できます。血圧測定も重要で、高血圧は腎臓病を悪化させる要因になります。
費用について:検査の組み合わせによって変わります。事前に内容と費用をご説明してから進めますので、お電話でお気軽にお問い合わせください(TEL: 055-269-5539)。
治療
食事療法がもっとも重要
腎臓病の治療で、もっとも効果がはっきりしているのが食事療法です。腎臓病用の療法食は、タンパク質・リン・ナトリウムの量が調整されており、腎臓への負担を減らします。継続することで進行を抑える効果が期待できます。
ただし猫は食の好みが強く、急に切り替えると食べないことがあります。1〜2週間かけて少しずつ混ぜて慣らしてください。それでも食べない場合は、別の製品やウェットタイプを試す方法もあります。食べないまま我慢させるより、まず食べてもらうことが優先です。
内服治療
進行度や症状に応じて、リン吸着剤、血圧を下げる薬、尿毒素の吸着剤、吐き気止め、食欲増進剤などを使います。すべてを一度に使うわけではなく、その子の状態に合わせて組み合わせます。
点滴治療
脱水や食欲不振があるときは、点滴で水分を補います。体内の水分バランスが整うと、それだけで元気が戻ることも多くあります。状態が安定していれば、ご自宅での皮下点滴をご提案することもあります。難しそうに感じられますが、練習すれば多くの方ができるようになります。
おうちでできるケア
水を飲みやすい環境をつくる
- 水飲み場を家の中の複数箇所に置く
- 器の素材や深さを変えてみる(ヒゲが当たらない浅く広いものを好む子が多い)
- 流れる水を好む子には循環式の給水器を
- ウェットフードを取り入れる、ドライフードにぬるま湯を足す
記録をつける
体重、食べた量、尿のかたまりの数、元気の様子。月1回でも記録があると、次の診察で治療の調整がしやすくなります。とくに体重は、数値で変化をとらえられる最良の指標です。
ストレスの少ない環境を保つ
腎臓病の猫は体調の変化に敏感です。急な模様替えや騒音は避け、静かに過ごせる場所を確保してください。
→ 犬・猫のストレスサインと体調不良|見逃しやすい変化・受診の目安
無理をしすぎない
腎臓病の管理は長い付き合いになります。療法食も投薬も点滴も完璧にやろうとすると、猫にも飼い主さんにも負担が大きくなり、続きません。できることから少しずつで構いません。何を優先すべきかは一緒に考えます。
早期発見のために
7歳を過ぎたら、年1〜2回の血液検査と尿検査をおすすめします。元気に見える猫でも、健診で腎臓の異常が見つかるケースは少なくありません。症状が出る前に管理を始められれば、その後の経過は大きく変わります。
→ 犬・猫の健康チェック完全ガイド|毎日の観察と触診、定期健診の頻度と内容
→ 犬の慢性腎臓病(CKD)とは?初期症状・検査・食事療法
よくあるご質問
Q. 療法食をどうしても食べてくれません
よくあるご相談です。食べないまま空腹が続くほうが危険なので、無理強いはしないでください。メーカーを変える、ウェットにする、少し温めて香りを立たせる、といった工夫で食べるようになることがあります。それでも難しければ、療法食以外の方法で負担を減らす選択肢もあります。
Q. 腎臓病は治りますか?
慢性腎臓病は完治しません。ただし「治らない=何もできない」ではありません。進行のスピードは管理次第で大きく変わります。早期に見つかって適切に管理された猫が、診断から数年穏やかに過ごすことは珍しくありません。
Q. 皮下点滴は自宅でできますか?
状態が安定していて、ご希望があれば指導します。最初は不安に感じられますが、慣れると数分で終わります。通院のストレスを減らせるのも利点です。無理のない範囲で、通院での点滴を続ける選択でも構いません。
Q. 水をたくさん飲むのは良いことでは?
健康な猫が適量を飲むのは良いことですが、「以前より明らかに増えた」場合は話が別です。腎臓が尿を濃縮できなくなり、薄い尿がたくさん出るため、失った水分を補おうとして飲水量が増えているのです。体が対処している状態なので、検査を受けてください。
まとめ
- 猫の慢性腎臓病はシニア期に非常に多く、症状が出た時点ですでに進行していることが多い
- いちばん早いサインは飲水量と尿量の増加、次いで体重減少
- 初期発見には血液検査(SDMAを含む)と尿検査の両方が有効
- 治療の柱は食事療法。内服と点滴を組み合わせて管理する
- 完治はしないが、進行の速さは管理で変えられる
- 7歳を過ぎたら年1〜2回の健診を
南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、愛猫の飲水量や体重の変化が気になる場合は、アルプス動物病院までお早めにご相談ください(TEL: 055-269-5539)。
この記事の監修:アルプス動物病院 院長
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