犬の慢性腎臓病(CKD)とは?初期症状・検査・食事療法と進行を抑える管理を獣医師が解説

こんにちは、南アルプス市のアルプス動物病院です。

「最近よく水を飲むようになった」「食欲はあるのに少しずつ痩せてきた」——こうした変化、「年のせいかな」で済ませていませんか?その裏に、慢性腎臓病(CKD)が隠れていることがあります。

慢性腎臓病はシニア犬に多い進行性の病気で、一度失われた腎機能は元に戻りません。だからこそ「どれだけ早く見つけて、どれだけ進行を緩やかにできるか」がすべてです。この記事では、見逃しやすい初期サインから検査・治療・ご家庭での管理まで、まとめて解説します。

慢性腎臓病とはどんな病気?

腎臓は、体の老廃物を尿として排出し、水分や電解質のバランスを整え、血圧の調整や造血にも関わる多機能な臓器です。慢性腎臓病では、この働きが数ヶ月〜年単位でじわじわと低下していきます。

なぜ「静かに」進行するのか

腎臓はとても我慢強い臓器で、大きな予備力を持っています。そのため、腎機能のかなりの部分が失われるまで、目立った症状が出ません。「症状が出てから」では病気がすでに進んでいることが多い——これが慢性腎臓病の一番厄介な性質であり、症状が出る前の健診が重要な理由です。

初期サインは「水」に現れます

慢性腎臓病の最初のサインとして代表的なのが多飲多尿(水をたくさん飲み、薄い尿をたくさんする)です。濃い尿を作る力が落ちるために起こります。

  • 水を飲む量が明らかに増えた(目安: 体重1kgあたり1日100mlを超える飲水は「多飲」の疑い。5kgの子なら500ml=ペットボトル1本です)
  • 尿の量・回数が増えた、色が薄くなった
  • 食欲が少しずつ落ちる、ムラが出る
  • 体重が減ってきた
  • 毛づやが悪くなった、寝ている時間が増えた

「水をよく飲むのは元気な証拠」ではありません。飲水量の増加は、腎臓病のほか糖尿病やホルモンの病気のサインでもある、受診に値する変化です。

慢性腎臓病の初期サイン

進行すると

嘔吐・下痢、口臭(アンモニア臭)、脱水、貧血、けいれんなど、老廃物が体に溜まる「尿毒症」の症状が現れます。この段階では体への負担が大きく、集中的な治療が必要になります。

当院で行う検査

  • 血液検査: 腎臓の数値(クレアチニン、BUN、SDMAなど)を測定します。SDMAは従来の項目より早い段階で腎機能の低下を捉えられるマーカーです(770円~)
  • 尿検査(1,650円): 尿の濃さ(尿比重)と尿タンパクを確認します。「薄い尿しか作れない」ことは、血液の数値より先に現れることもある重要なサインです
  • 超音波・レントゲン検査: 腎臓の形・大きさ、結石や腫瘍など他の病気の関与を確認します
  • 血圧測定: 腎臓病は高血圧と悪循環の関係にあり、進行度の評価と治療方針に関わります

検査結果をもとに、国際的な基準(IRISステージ分類: ステージ1〜4)で進行度を評価し、その段階に合った治療を組み立てます。

治療 — 「治す」ではなく「進行を緩やかにする」

失われた腎機能は戻せませんが、残っている機能を守ることはできます。

食事療法が治療の主役です

腎臓に配慮した療法食は、慢性腎臓病の治療の中で最も効果がはっきりしている柱です。タンパク質・リン・ナトリウムを調整した食事に切り替えることで、腎臓への負担を減らし、進行を緩やかにします。「薬より食事が効く」病気だとご理解ください。切り替えは急がず、少しずつ混ぜながら数週間かけて移行するのが成功のコツです。

状態に応じて組み合わせる治療

  • 皮下点滴: 脱水は腎臓の大敵です。通院での皮下補液で水分バランスを支えます。ご希望に応じてご自宅での点滴方法の指導も行っています
  • 内服薬: 血圧や尿タンパクのコントロール、リンを調整するお薬(リン吸着剤)、吐き気止めなどを状態に合わせて使います
  • 貧血への対応: 進行例では造血のサポートを行うこともあります

ご家庭でできること

  • 新鮮な水をいつでも飲める環境に: 水飲み場を複数用意し、飲水を妨げない工夫を。ウェットフードの活用も水分補給になります
  • 療法食を続ける: 「かわいそうだから」と普通のフードやおやつに戻すと、治療効果が失われます。食べてくれない場合は、種類の変更や温め方の工夫など選択肢がありますのでご相談ください
  • 記録をつける: 飲水量・食事量・体重・元気さをメモしておくと、診察での状態把握と薬の調整にとても役立ちます

早期発見のために — 7歳を過ぎたら年1〜2回の健診を

慢性腎臓病は、定期健診の血液検査・尿検査で「症状が出る前」に見つかることが多い病気です。シニア期(目安7歳〜)に入ったら、年1〜2回の健診をおすすめします。フィラリア検査の採血と同時に腎臓の数値をチェックすることもできるので、通院の負担を増やさずに続けられます。 (→定期健診はなぜ必要?犬のフィラリア症

よくあるご質問

Q. 慢性腎臓病は治りますか? 残念ながら、一度失われた腎機能は回復しません。ただし、早い段階で見つけて食事療法と管理を始めれば、進行を緩やかにし、良い状態を長く保つことは十分に可能です。

Q. 療法食をなかなか食べてくれません。 よくあるお悩みです。腎臓用の療法食は各社から味や形状の違うものが複数出ており、「別のメーカーなら食べた」というケースは日常的にあります。温めて香りを立たせる、ウェットと混ぜるなどの工夫もあります。諦める前にぜひご相談ください。

Q. 皮下点滴は自宅でできますか? 状態が安定している子であれば、ご自宅での皮下点滴に切り替えられる場合があります。手技は診察時に丁寧にお教えします。通院ストレスの軽減にもつながる選択肢です。

Q. どのくらい長く生きられますか? 進行度(ステージ)や年齢、合併症によって大きく異なるため、一概には言えません。確かなのは、発見が早いほど、そして食事療法をきちんと続けられるほど、経過が良い傾向があるということです。その子の状態に合わせた見通しは、検査結果をもとに丁寧にご説明します。

Q. 猫の腎臓病と同じですか? 腎臓の働きが落ちる点は同じですが、猫はさらに腎臓病になりやすい動物で、管理のポイントも少し異なります。猫についてはこちらのシリーズをご覧ください。 (→【第1回】猫の腎臓病はなぜ多い?

まとめ

  • 慢性腎臓病は症状が出る前に進む病気。「多飲多尿」が最初のサインです
  • 診断は血液検査+尿検査。SDMAや尿比重で早期発見が可能です
  • 治療の主役は腎臓療法食。皮下点滴と内服を状態に合わせて組み合わせます
  • 7歳を過ぎたら年1〜2回の健診を

南アルプス市を中心に、甲府市・韮崎市・中央市・昭和町など周辺地域で、「最近水をよく飲む」「痩せてきた」と感じたら、アルプス動物病院までお気軽にご相談ください(TEL: 055-269-5539)。

この記事の監修: アルプス動物病院 院長

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