🐶小型犬に多い「心臓病」
― 咳が続いたら要注意!僧帽弁閉鎖不全症とは ―
こんにちは!アルプス動物病院です。
高齢のワンちゃんで「最近よく咳をする」「疲れやすくなった」といったご相談をいただくことがあります。
その原因のひとつが、僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)という心臓の病気です。
今回は、この病気の特徴や早期発見のポイントについてご紹介します。
❤️ 僧帽弁閉鎖不全症とは
心臓の弁がうまく閉じなくなる病気
心臓は「左心房」「左心室」「右心房」「右心室」の4つの部屋からできています。
そのうち、左心房と左心室の間にある僧帽弁という弁が、加齢や遺伝などの影響で変形し、うまく閉じなくなるのが僧帽弁閉鎖不全症です。
血液が逆流する仕組み
弁がきちんと閉まらないため、左心室から送り出される血液の一部が左心房に逆流します。
この逆流が続くことで心臓に負担がかかり、やがて心臓が拡大(心拡大)し、肺に水がたまる肺水腫を起こすこともあります。
🐶 どんな犬に多いの?
好発犬種
特に以下のような小型犬で多く見られます。
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- チワワ
- ポメラニアン
- トイ・プードル
- マルチーズ
- シーズー
発症年齢
多くは7歳以上の中高齢犬で見られますが、遺伝的に若い年齢から発症する犬種もいます。
⚠️ 主な症状
初期に見られるサイン
- 咳が増えた(特に朝方や興奮時)
- 運動を嫌がるようになった
- 少しの運動で息が荒くなる
進行すると現れるサイン
- 呼吸が速い、または苦しそう
- 舌や歯ぐきが紫色(チアノーゼ)になる
- 眠っているときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする
- 食欲が落ちる、体重が減る
こうした症状が見られたら、できるだけ早く受診しましょう。
🧪 診断のための検査
聴診と画像検査
病院ではまず心雑音の有無を聴診で確認します。
雑音がある場合、心臓の大きさや血液の流れを確認するために、
- レントゲン検査(心臓や肺の状態を確認)
- 心エコー検査(逆流の程度や心臓の動きの確認)
を行います。
血液検査
心臓にかかる負担を示す「BNP」や「NT-proBNP」といった心臓マーカーを測定し、
心不全の進行度を把握するのに役立ちます。
💊 治療と生活管理
治療の基本
僧帽弁閉鎖不全症は完治が難しい慢性疾患ですが、早期から治療を始めることで進行を遅らせることができます。
治療には、
- 心臓の負担を減らす強心薬・利尿薬・血管拡張薬
- 塩分を控えた心臓病対応フード
が用いられます。
ご家庭でのケア
- 無理な運動を避け、安静を保つ
- 体重を適正に維持する
- 定期的に心臓の検査を受ける(3〜6か月ごとが目安)
🏥 早期発見が長生きのカギ
僧帽弁閉鎖不全症は、早く見つけるほどコントロールしやすい病気です。
咳や息づかいの変化など、些細なサインでも気づいたら早めに受診しましょう。
アルプス動物病院では、聴診・レントゲン・心エコー検査などを組み合わせ、
その子の心臓の状態に合わせた最適な治療をご提案しています。
大切なご家族が、これからも元気に毎日を過ごせるよう、定期的な健康チェックをおすすめします。


